自己肯定感が見当たらない時は、草取りをしたら良いと思う

ガサガサガサガサ
朝を知らせる鳥の声と、仕事へと急ぐ車の音と、鍬の音が交差する。
私の頭の中では「ブルドーザー陽」という言葉がマントラのようにリピートしている。

昨年の夏に、ずっと長年庭の手入れをしていた祖母が熱中症になった。祖母は今年でなんと99歳になるスーパーおばあちゃん。ビスケットが身体にとても良いと思っていて、お昼ごはんはビスケット16枚。健康ってなんだろうと祖母を見ているといつも思う。

祖母が庭の世話が出来なくなり、代わりに草取りを始めた。夏の間は早起きしてやっていたが、冬になると空が真っ暗で出来なくなった。でも冬は草は生えないと聞いていたので、まぁいいかと思っていたら、冬にもちゃんと草は生えるではないか。特にクローバー。多すぎて四つ葉のクローバーを探す気にさえならない。
日中は何かと予定が入ってしまうので、「どんどん育ってますよ」と声をかけてくる草に「また今度」と言いながら日々過ごしていたら、春の訪れと共に庭が大変なことになってしまっていた。

日が昇るのが早くなり、また朝の草取りを再開した。庭の場所によって草取りの勝手が違う。土だけのところは、立って鎌でガサガサできるのだが、石が敷き詰めてあるところがなんとも難しい。

昨年の夏ガーデニング用の椅子を買い、それに座って草取りをしていたが、やはり長時間座っていると腰が痛くなってくる。
そこで先日、四つ這いでやったら良いのではないかと思いつき、段ボールを膝の下に敷いてやってみたら、なんと素晴らしいこと。
不安定な場所に手や膝をついて体を支えるので、良い体幹のトレーニングにもなるし、視野も変わり、土の匂いなどもより強く感じ、たくさんの感覚入力が入る。座ってやるよりも断然スピードが早いし、1時間やっても疲れず、永遠に出来そうな気さえする。姉が買ってきた鍬がまた素晴らしく、まるで自分がブルドーザーになったような気持ちにさせてくれて、どんどん作業が進む。

ただ四つ這いのトレーニングを1時間もするのは、つまらないのでやってみたくもないけど、草をとって庭を綺麗にするという目的があれば安易に出来てしまう。
これが目標指向型運動というものであろう。

体のことを勉強していると、様々な日常の動作がどのように自分にとって良い影響を与えているのか、もしくはどうやったら良い影響に変えることができるのかが分かり、つまらない動作も面白くなるところがとても良い。

そして何より草取りは、成功体験しかない。誰でもできる。絶対やった分だけ成果が瞬時に出る。
すごく綺麗になった庭を見て、自然と「がんばったね、私」と労う。
日焼けと、ヤケーヌによる肌への摩擦、そしてこれからは蚊による攻撃が待っているが、自己肯定感がお散歩してしまった時には、とても効果的ではなかろうか。

何年も前は、毎朝起きてすぐヨガの練習を2時間近くしていた。2時間も朝練習できるとは、私はなんて幸せ者なのか、と毎日思っていた。
今は草取りをしていてそう思う。
すごい楽しい事だけが毎日起こっているわけではないけど、草取りをする余裕があるというのは、家族が元気で平穏だからできること。

小さな幸せを愛でる。
きっとそれが健康の秘訣、16枚のビスケットのように。

2025-11-02 | Posted in BlogComments Closed 

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